出会い系で出会った男とキスして死にかけた話

僕と同年代のゲイにとって、ゲイの世界の入口は大抵は掲示板です。
SNSとかGPSアプリじゃダメなんです。
掲示板です。

九州限定の掲示板を利用して、初めて会った人は年上でした。
2、3歳くらい上だったような気がします。

何を喋ったのか、何か食べたのかも思い出せないのですが、はっきりとしていることが1つあります。
キスをしました。
その瞬間だけは、まるで無限地獄に叩き落とされたように苦しんだので、記憶にしっかりと刻み込まれています。
プラスチックが焦げたような鼻をつく激しい臭気が口に広がり、「うっ、おっ、おげえ」と思わずえづいてしまいました。
これはなんなんだ。
「ふぶるる、ふぶうぇい」と音を立てて振りほどくように、口を離すと、歯が見えました。
歯並びが悪いせいなのか、煙草を吸うせいなのか、なぜこれほどまでに臭いのだ。
「大丈夫?」と聞かれ、「うん…」と言いながら、胃液を飲み込みました。
ガムを勧めればいいのかと一瞬考えましたが、ガムごときでどうにかなるレベルではないと判断しました。
「臭かあ」「臭かろうもん」「臭かばってん」「臭いったい」頭のなかはそればかりで、帰り道にだんだん腹が立ってきました。
しかし、「お前、マジで口が臭え!一体何食ってんだ?」と言うわけにもいかず、縁も記憶もフェード・アウトしました。

…あれから15年経ちました。
名前も顔も覚えていません。
しかし、あの臭いは忘れられません。
オーブン・トースターで間違えてサランラップを焼いてしまったときに、僕はあの口臭に会えるのです。
「ふぶるる、ふぶうぇい」

画像出典:Gidget Meets Amos / lucianvenutian

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*
*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください