入院病棟と死 / Inpatient ward and death

僕が初めて入院したのは小6のことだった。
あまりの痩せっぷりに脳腫瘍を疑われて、検査入院した。
小児科の入院病棟には、同じ歳かそれより下の子供がたくさんいた。
6人部屋で同室の子供たちは、走り回って騒いでいて健康な子供にしか見えなかった。
だから、僕は冷めた目でそれを眺めていた。
そんな僕にプラモデルを持ってきた子がいて、僕は手を振って断った。
…翌日の朝になると、その子のベッドが空になっていた。
肝臓にガンがあったその子は深夜に血を大量に吐いて亡くなったそうだ。
真夜中に心肺蘇生法を施し、大騒ぎだったらしいが、僕はずっと眠っていて気づかなかった。

2回目の入院は高1になる。
入院してすぐに隣になった人は肺がんだった。
それなのに、石原慎太郎の書いたベストセラーの「弟」を読んでいた。
ガンになった石原裕次郎の末期を書いたものだったので、「そんなの読んで平気なんですか?」と思わず、尋ねてしまうと「本選び、失敗した」と笑っていた。
本の中で、石原裕次郎は最期に「ポカリ」と言ってポカリを飲んで死ぬらしいのだが、その人も毎日ポカリを飲んでいた。
だんだん食べなくなって、トイレにも行けなくなって、そしてある夜、隣のベッドにバタバタと人が集まって、カーテン越しにいろんな音がして亡くなった。

3回目の入院は22歳のとき。
寒い冬の時期に食堂のうどんをよく奢ってくれるおっさんと仲良くなった。
末期の肝臓がんだった。
どこかの社長らしく、会社の人を全員集めた翌日に亡くなった。
最後に奥さんから「主人の相手をしてくれてありがとう」と言われた。

なぜだろう。
入院した頃の医師や治療内容はほとんど記憶にない。
反対に、ポンッと消えていった人が話した内容だけが心に残ってしまった。
世界の不条理に嘆く僕の背中を、いつまでも優しく押してくれるのだ。

弟 (幻冬舎文庫)
弟 (幻冬舎文庫)

posted with amazlet at 17.11.15
石原 慎太郎
幻冬舎
売り上げランキング: 334,517

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*
*