180センチはゆうに超えた背の高い男に便所の壁に叩きつけられたことがある。
その便所は市が管理する文化施設にあった。

二十歳のころ、定期的に開催される地元のアートイベントに参加していた。
ポストカードを販売していたんだけど、2日間で1枚も売れないことがほとんど。
それもそのはず、グロテスクな絵を描いていた。
そのイベントで知り合った女がいて、ある時、見知らぬ男を連れてきた。
年齢は20代後半くらいで、やけにワイルド。
狼系とでもいえばいいか。
目の前にあぐらをかくなり、饒舌に自分の夢を語り始めたので、とりあえず相槌を打った。
話し終えるとさっといなくなったので気にも留めなかった。
これが良くなかった。

その数日後、便所で突如現れた男に「俺のチケット盗んだだろ!?」と胸ぐらを掴まれたのだ。
待ち伏せするにしても便所?ハッテン?と思う余裕もない。
どうもあの日、彼が持っていたチケットの束がなくなって大損害らしい。
首を締めてくる手が離せずもがいていると、便所の入口に女が現れて、どうにか解放された。

さらにこの数週間後、またイベント会場に男が現れた。
男がずんずんこちらに向かって歩いてくるので、これは逃げるべきかと動線を考えていると、いきなりの土下座である。
会場にこだまするほどの大声で「俺が悪かった!俺を殴ってくれ!」と芝居じみたことを始めた。
どうにか取りなして帰ってもらったんだけど、心底うんざりした。

その後、女に「なんなの?あいつ。頭おかしいんじゃないの?」と問い詰めると、「悪い人じゃないのよ…」と必死にかばうばかり。
それもそのはず、結局その女はその男と結婚した。
DVに苦しんでいるようだけど、同情する気はない。

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