夕食のあとぼんやりしてると、電話が鳴った。
珍しい名前。昔の友人だ。
受話器から救急車の音が響く。
少し耳から話す。
「たかひろ元気かあ」大きな声。そしてその上に乗りかかるように大きなサイレン。
「え。救急車うるさい」
「あ。救急車今真横」
「かけるタイミングわりーよお前」
「いいじゃんもう通り過ぎたけん」
俺が今どこにいるのか尋ねると彼は岡山だと言う。どうやら出張らしい。
「たかひろ今元気やろー」
「ん?まあまあかな」
「いや、たかひろは電話の第一声で調子がわかる。カラ元気が多いけど!」
「なんだよそれー」
その後は最近読んでる本や漫画、観た映画をお互いに話した。
「学生時代は全然新刊出してくれなかった京極さんの新刊、買ったまま読んでねえ。時間がないのはやだなあ」と彼は最後にぼやいた。
学生時代、彼ほど読書家はいなかった。
ただ読む本がとてもマニアックだった。民俗学、郷土史。妖怪変化。
先日、相方から「十二国記」という本を薦められて今日少し読んでみた。
まだよくわからない。たった20ページだ。
仲がいいヤツ同士で本やCDをお互いススメまくる。
たまに否定されてケンカになる。
いくつになってもそういうのって楽しいな。
前に通っていたジムとは違うジムに入会した。
ひと月の費用は少しだけ高くなるが、その分施設は新しく快適だ。
運動しながら音楽チャンネルが観れる。好きなPV観ながら走るのは心地いい。
インストラクターも親切で活気がある。
コースを選ぶようになっているので、筋肉をゴリッと付けることにした。
運動した後、ぐっすり寝た翌朝、なまっていたカラダが息を吹き返した。
今日も夕方からジムに寄った。
走ってるとsalyuのPVがよく流れる。
聴けば聴くほどいい。何より力強い。そして美しい。
強さは美しさだ。
まずは体力が欲しい。やりたいことをやり抜けるカラダが欲しい。
そんなカラダに宿る精神はきっと美しい精神だろう。
大切な人を守れるココロだろう。
いつも叫んでる俺の声、あなたに届いているだろうか。


休みの朝。
頭に慣れないワックスつける。
親富孝通りの外れの定食屋で飯を食う。
相方におかずを一口ずつもらう。予想以上に旨くて感動する。
カラオケに行く。(写真はSyrup16gの「遊体離脱」のサビ)
ラウンド1でメダルゲームに興じて負けまくって、愕然となる。
CDSHOPに寄るつもりが8時過ぎて閉店してる。
リンガーハットでまあまあな味のちゃんぽんをすする。
家に帰ってDVD、映画「パッチギ」を観る。
帰りに買ってきておいたモスシェイクをズーズー吸う。
「映画あんま面白くなかったね」と感想一言で終わる。
そんななんてことない休日が終わった。
翌朝、すごくうなされて俺は目を覚ました。
路上で人に殴られる夢だった。
寝る前に観た映画に暴行シーンが多かったからだろうか。
起きるといつも腕まくらしてるはずの俺の腕が布団の中にあった。
横を見ると相方が珍しく俺を腕まくらしていた。
俺と目が合うと、相方は「うなされてたから」と呟いてまたいびきをかきだした。
その朝はいつもより少し幸せな朝だった。
少しじゃないな。涙が出るほどそんな些細が嬉しかった。

昨日の夜、相方に悩みを相談すると俺の期待した言葉がかえってこなかった。
相談なんていいながら結局慰めや同意がほしいだけだったのだ。
“自分が正しいのか”、“相方が正しいのか”なんて考え始めるとグルグル頭は痛くなった。
相方はそんな俺を気にせずゴシゴシ歯を磨いている。
そして、5分経って、気づく想う。大切なこと。
明日からしばらく相方とは会えなくなるなあ。今日の夜仲良く寝る方が大切だよなあ。
今日の飯をご馳走してもらったお礼をぽつりと言って、頭まで布団をかぶった。
目の前のことでいっぱいいっぱいになると大切なことを見失う。
いつも青信号。我を通すだけだった俺がめずらしく一旦停止赤信号。
正しいことより幸せなこと。たのしいこと。
両親が実家の庭でガーデニングを始めてから、ずいぶん経つ。春夏秋冬、季節の変化に合わせて途切れることなく花が咲いている…らしい。“らしい”というのは普段そんなに俺は庭を見る習慣がない。それでも外壁をツタが覆い、大きな蜂に気をつけて門戸を開けることが多くなり、毎晩ガラスにヤモリが貼りついているのを見ると庭が変わってきたんだなと気づく。今日、普通のバッタが足元を跳ねた。覗き込みながらふと思う。トノサマバッタっていたよな。どこ行ったんだあれ。今年の夏、近所の小学校の横を通りかかると校庭で園芸の時間だろう。子供たちが鉢を持って並んでいた。
大きな声があがる。「アリ!アリ!そこも!」と言いながら、鉢のないもう片方の手に持った殺虫剤のスプレーを必死に地面にまいていた。なんだか少し悲しかった。